DISASTER
停電した夜に、何が使えるか
停電の話をするとき、いちばん先に出てくるのが「ポータブル電源を買うべきか」です。でも、それって順番が逆なんじゃないかと思います。
停電で困るのは、電気そのものではなく、電気がなくなった瞬間に何が止まるかです。照明、スマホ、冷蔵庫、エアコン、お風呂の給湯。全部いっぺんには揃えられません。だから、揃える順番を決める必要があります。
この記事では、防災の電源を0円・1万円前後・5万円以上の3段階に分けて整理します。ポータブル電源は最後の段階です。先に買うべきものがあります。
目次
結論:3段階で揃える
私たちの結論は、こうです。
- 第1段階(0円):モバイルバッテリーを満充電にしておく。冷蔵庫を開けない。窓を開けない。これだけで最初の数時間は越せます
- 第2段階(1万円前後):大容量モバイルバッテリー、電池式のランタン、手回し・ソーラー充電のできるラジオ。ここが「1泊の停電」の実用ラインです
- 第3段階(5万円以上):ポータブル電源。停電が数日に及ぶ場合や、在宅勤務を止めたくない場合の備えです
大事なのは、第3段階から買わないこと。5万円のポータブル電源を買って満充電のまま放置し、いざというときに残量が20%だった、というのがいちばん悲しいパターンです。1万円で揃う第2段階を先に固めたほうが、実際に役に立ちます。
まず、停電で止まるものを書き出す
買い物の前に、紙に書き出してみてください。家族の数と、家の作りで答えが変わるからです。
- 照明:家全体。夜はこれがないと何もできません
- スマホ:連絡、情報、決済。現代の停電でいちばん困るのはこれかもしれません
- 冷蔵庫:止まっても数時間は保ちますが、開け閉めすると一気に傷みます
- エアコン:真夏・真冬は厳しい。ただし後述するとおり、家庭用は現実的に動かせません
- 給湯・コンロ:ガスなら影響なし。オール電化ならアウトです
- 在宅勤務のPC・回線:仕事を止めたくないなら、ここが最優先になります
このうち、「照明」と「スマホ」だけでいいなら第2段階で足ります。「冷蔵庫も」「PCも」となると第3段階が必要です。エアコンは、そもそも諦めたほうが現実的です。
第1段階:0円でできること
お金をかけずにできることを、先に並べます。地味ですが、効果は大きいです。
- モバイルバッテリーを満充電で保管する:普段使っているもので構いません。ただし、使ったらすぐ戻す習慣が必要です
- 冷蔵庫を開けない:停電中に開けると、冷気が逃げて温度が上がります。扉を開けなければ、庫内は数時間保つとされています
- 部屋を1つに集まる:照明も暖房も、使う場所を絞れば足ります
- スマホの省電力モードをONにする:画面の明るさを下げ、使わないアプリを閉じる。これだけで持ちが倍近く変わります
- 車があるなら、車のバッテリーとガソリンを確認する:シガーソケットから充電できる機器もあります
第1段階は「買い物」ではなく「習慣」です。ここができていない人が、高い道具を買っても効果は薄いと思います。
第2段階:1万円前後の備え
1泊程度の停電を、快適に越えられるラインです。3つ揃えると、だいたい1万円前後になります。
| 役割 | 選ぶときの目安 | 商品例 |
|---|---|---|
| スマホの充電 | 20,000mAh前後(約74Wh) | RORRY CharmGo D2 20,000mAh Amazon |
| 照明 | 電池式・調光できるもの | Lepro LEDランタン 1500ルーメン Amazon |
| 情報 | 手回し・ソーラー・USBの3電源 | Greeshow 防災ラジオ XLN-297 Amazon |
※商品例はAmazonで2026年10月に確認した時点の掲載情報によるものです。価格・在庫・仕様はリンク先でご確認ください。
照明は「電池式」を選ぶ
停電用の照明でいちばん大事なのは、明るさより「電池で動くこと」です。充電式のランタンは、いざというときに充電が切れていたら終わりです。電池式なら、予備の乾電池があれば復活します。
もうひとつは調光できること。夜、トイレに行くだけのときに1,500ルーメンは要りません。無段階で暗くできるタイプは、電池の持ちも良くなります。
スマホ用は20,000mAhあれば1泊もつ
20,000mAhは約74Wh。スマホ(約15Wh)なら理論値で4回前後、変換ロスを見て3回程度です。家族で分け合うなら、1人1個ではなく大きいものを1個のほうが管理が楽です。
飛行機に持ち込める上限は160Whなので、20,000mAhなら余裕があります(預け入れは不可)。
ラジオは「スマホが死んだとき」のため
スマホがあれば情報は入ります。でも、基地局が止まると通じません。そういうときにラジオだけは生きています。手回しとソーラーとUSBの3電源に対応したものなら、電池切れの心配も減ります。
実際にはラジオを普段使わないので、買ったまま収納されがちです。半年に1回、実際に電源を入れてみる。これができるかどうかで、非常時の価値が変わります。
第3段階:ポータブル電源
ここからが本題です。ポータブル電源が必要になるのは、停電が数日に及ぶ場合か、停電中も仕事を続けたい場合です。
選び方は、容量ではなく定格出力から入ります。500W定格では電気ケトルも炊飯器も動きません。1,500Wでようやく家庭の主要家電が動く、という段階です。
| 機種 | 容量 | 定格出力 | 停電時にできること |
|---|---|---|---|
| Jackery 500 New Amazon | 512Wh | 500W | 照明・スマホ・ノートPC・電気毛布。約5.7kgで持ち運べる |
| Jackery 1000 New Amazon | 1,070Wh | 1,500W | 炊飯器・電子レンジ・ドライヤー。小型冷蔵庫も数時間〜1日 |
| Jackery 2000 New Amazon | 2,042Wh | 2,200W | 上記に加えて2,000W級の調理家電。据え置き前提 |
※2026年10月時点のJackery公式ストア掲載情報より。くわしい比較はJackeryのポータブル電源の記事にまとめています。
私たちの感想としては、家で待機させるなら1000 Newが現実的な上限です。2,042Whの2000 Newは容量に余裕がありますが、18.6kgを日常的に動かすのは現実的ではありません。設置場所を決めて置きっぱなしにできる家なら、2000 Newは強い選択肢になります。
逆に、マンションで「自分の部屋だけ停電」という状況はほぼありません。建物全体が止まるので、数日分の電気を1室でまかなうのは現実的ではない。その場合は、ポータブル電源より「水・食料・簡易トイレ」に予算を振ったほうがいいと思います。
ソーラーパネルは「保険の保険」
ポータブル電源を買うと、次にソーラーパネルが欲しくなります。停電が長引いたとき、電気を作れるのは確かに強い。
ただし、現実はこうです。ソーラーは晴れていないとほとんど発電しません。雨天や曇天では出力が大きく落ち、パネルの向きや季節でも変わります。100Wのパネル1枚で1,000Whクラスを満充電するには、快晴でも十数時間かかります。つまり「1日では終わらない」。
だから、ソーラーはメインの充電手段ではなく、滞在中に少しずつ足す手段と考えてください。停電の最初の1日は、買っておいた電気で動かす。2日目以降をソーラーで延ばす。この順番です。
パネルを選ぶなら、容量に余裕を持たせてください。100Wより200W。折りたたみ式は持ち運びに便利ですが、重さと設置面積は増えます。
ありがちな失敗
防災用品は「買ったとき」がピークで、そこから価値が下がっていきます。よくある失敗を並べます。
- 満充電のまま放置する:リチウムイオンは、満充電で高温の場所に置きっぱなしにすると劣化が早まります。50%前後で保管し、半年ごとに充放電するのが基本です
- 乾電池の液漏れ:長期間入れたままにすると、液漏れで機器が壊れます。電池は別に保管し、点検のたびに入れ替えます
- 消費電力を勘違いする:「容量が大きいから動く」と思い込むこと。定格出力を超える家電は動きません
- コードやアダプタを別の場所にしまう:本体だけあっても充電できない。付属品は1つの箱にまとめます
- 家族が場所を知らない:暗い中で探すのは無理です。収納場所を家族に共有し、照明の場所を決めておきます
半年に1回の点検リスト
4月と10月、みたいに時期を決めてしまうのがおすすめです。10分で終わります。
- モバイルバッテリーとポータブル電源の残量を確認し、50〜80%に整える
- ランタンの電池を入れ替え、実際に点灯させる
- ラジオの電源を入れ、AMとFMの両方が受信できるか確認する
- スマホを実際に充電してみる(ケーブルの断線はここで分かります)
- 収納箱の中身を全部出して、賞味期限と持ち物を確認する
- ポータブル電源の設置場所と、家族への共有事項を見直す
地味な作業ですが、これをやるかどうかで「持っているだけ」か「使える」かが分かれます。買った日ではなく、カレンダーに日付を入れてしまうのがおすすめです。
向かない人
向いている人
- 台風や地震のたびに「何か用意しなきゃ」と思う
- 集合住宅で、停電時に照明とスマホだけでも確保したい
- 在宅勤務で、停電時にも作業を止めたくない
- キャンプや車中泊もするので、防災装備を兼用したい
- 発電機は燃料の保管が不安、という人
向かないかもしれない人
- すでに十分な備えがある(重複して買う必要はありません)
- エアコンを動かしたい(家庭用は現実的に無理です)
- 日常の電気代を下げたい(目的が違います)
- メンテナンスをしたくない(半年ごとの点検が前提です)
- とにかく安さだけで選びたい(安全面の確認が後回しになります)
よくある質問
使い方によります。1,070Whの機種で、照明・スマホ・通信機器・ノートPC程度なら1〜2日が目安です。調理家電を使うと1日ももちません。冷蔵庫を動かすと半日〜1日で尽きます。
家庭用エアコンは動かせないと考えてください。一般的なポータブル電源の出力は100Vで、200Vのエアコンには対応しません。また室外機の起動電流が大きく、定格内でも安定動作は保証されません。暑さ対策は、扇風機・保冷剤・遮光で考えるほうが現実的です。
第2段階(モバイルバッテリー・ランタン・ラジオ)で1万円前後、第3段階のポータブル電源は5万円台から20万円前後です。価格は時期やセールで変動するため、リンク先で確認してください。
発電機は燃料があれば長時間動かせますが、燃料の保管、排気ガス、騒音、定期運転が必要です。ポータブル電源は室内で使えて静かですが、容量が尽きたら充電が必要です。集合住宅ならポータブル電源、戸建てで庭や物置があるなら発電機も選択肢になります。
防災用品でいちばん難しいのは、買うことではなく、しまう場所を決めることだと思います。段ボールに詰めて押し入れの奥に入れると、いざというときに出せません。
だから、ランタンは「玄関の靴箱の上」のように、暗くても手が届く場所に。備えは、収納場所まで決めて初めて機能します。